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モノクロームロマンス文庫(海外BL小説)「叛獄の王子(はんごくのおうじ)」感想〜2人の王子の愛と絆を描く激動の一大叙事詩〜

1 「叛獄の王子」簡単な紹介

叛獄の王子(漢字難しい)原題は「captive prince(捕らわれの王子)」、素晴らしかったです。

 

モノクロームロマンス文庫で「アドリアン・イングリッシュ」シリーズとこちらがおそらく2大エースというだけあって、めちゃくちゃ面白かったです。

 

 

 

簡単に言うと、ゲイロマンスが多いGame of Slonesですねこれは。

 

時代背景は中世をイメージしており、アキエロスとヴェーレという敵対する国の2人の王子が国家間の争い、国内での陰謀に翻弄されつつ生き抜いていく激動の一大叙事詩です。

 

歴史叙事詩でありつつ、この2人の王子の運命的なラブストーリーでもあります。

 

 

叛獄の王子 ~叛獄の王子 (1)~ (モノクローム・ロマンス文庫)

叛獄の王子 ~叛獄の王子 (1)~ (モノクローム・ロマンス文庫)

 

 

 

高貴なる賭け 叛獄の王子2 (モノクローム・ロマンス文庫)

高貴なる賭け 叛獄の王子2 (モノクローム・ロマンス文庫)

 

 

 

叛獄の王子(3) 王たちの蹶起 (モノクローム・ロマンス文庫)

叛獄の王子(3) 王たちの蹶起 (モノクローム・ロマンス文庫)

 

 

叛獄の王子(外伝) 夏の離宮 (モノクローム・ロマンス文庫)

叛獄の王子(外伝) 夏の離宮 (モノクローム・ロマンス文庫)

 

このイラストほんと好き。

 

 

 

あらすじはこんな感じです。

 

アキエロスの王子デイメンは、奴隷として隣国ヴェーレの王子ローレントの前に差し出される。手枷と首輪をつけられ、氷の心をもったかのようなローレントから屈辱的な扱いを受けるデイメン。しかし彼は心の自由を失ってはいなかった。陰謀と愛憎蠢くヴェーレの宮廷内でローレントもまた孤立していた……。

美しく、高潔な二人の王子の魂の絆を描く三部作が幕を開ける……!

 

 公式HPより。

 

デイメンは褐色の肌に黒い髪の王子。25歳。比較的単純で情に熱い「良い奴」。体格に恵まれており剣技や馬術にも優れ、極めて高い戦闘力を有し、国民や兵士たちからの人望も厚い。その人の良さに逆に付け込まれることもあるわけですが。

 

ローレントは金髪碧眼で人並み外れた美形の王子。20歳。剣技や馬術にも優れますが、口が上手く、非常に頭が良く何手先までも戦況を読むことのできる頭脳派であります。感情を表に出さず冷静に判断を下す様から冷血と囁かれています。

 

その見た目も雰囲気も2人は正に火と氷、陽と陰、太陽と月、のように対照的です。

 

 

2 2人の王子(ここからネタバレ!!!)

*さて、以下は盛大に「叛獄の王子」1〜3巻のネタバレしますので、ご注意ください!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デイメン目線で話が進むため、読者にはローレントは冷酷で非情な人物のように見えます。しかしこれが一種の叙述トリックといいますか、ローレントはデイメンの正体を知っていたのであり、デイメンに冷酷な態度を取るのも当たり前ではあったんですね。

 

しかし、話が進むにつれてローレントが初めの印象とはかなり異なる面を隠し持っていることが明らかになっていきます。

 

デイメンとローレントは、お互いに、その実力、誠実さ、を目の当たりにすることによって極めて悪かったお互いの印象は大きく変わっていきます。

 

段々とローレントのデイメンに対する当たりが柔らかになっていき、数々の苦境を2人で乗り越えていくことによって、2人はお互いに強い絆で結ばれた戦友のような存在になっていきます。そして、友情だけではなく。

 

 

 

ローレントの見た目はずばりデイメンの好みど真ん中であり、デイメンはローレントが敬愛していた兄に似た雰囲気を持つ男なのです。

 

しかし他方で、ローレントにとっては兄を殺した男であり、デイメンにとってはローレントは敵国の王子であり自分が殺した男の弟なのです。

 

まさにロミオとジュリエットな2人。

 

しかし、敵国の王子同士という点はともかく、他方が他方の兄を殺したというのは中々にヘビーな設定です。

 

 

 

 3 頑張って2巻まで読もう!!

1巻は、BL的な要素はあまりありません。ヴェーレでは、私生児を恐れて皆基本的に同性間で性行為をするので(なんと・・・)、そういった記述はありますが、肝心のデイメンとローレントは基本的に反目しあっている感じです。

 

しかし2巻では、2人の距離は段々と縮まっていき、とうとう、とうとう・・・そういうことになります。

 

ここまで長かった!!! 1巻分が長いので、結構チョロく寝るBLに慣れた身としては中々ここまで我慢するのはしんどいかもしれません。しかし、長かった分だけいざそうなると読者としてはすごい興奮します。興奮というかもう感無量というか・・・古めの表現だと、

 

キターーーーーーーーー!!!!!!!!!

 

という感じです。

 

すぐ寝るプレイを楽しむのは初心者。上級者は寝る雰囲気なんて感じさせないところからもう引っ張って引っ張って、この壮大な前戯も全部パッケージで楽しむのです。空腹を我慢するほど、ご馳走の美味しさが際立つのです。

 

1巻からここまで読み進めてきた読者は、読みながら1人でのたうち回ること間違いなし。

 

しかしこれで一件落着かというとそうでもなくて、3巻でもすったもんだしてます。最後まで展開が読めず、どんでん返しが続き、息つく暇を与えません。

 

 

 

 4 ローレントの破壊力はすごいぞ

この「叛獄の王子」は、何より、ローレント王子が本当に魅力的です。

 

このローレントの魅力は3巻まで全部見てこそ分かるものです。

 

金髪碧眼の浮世離れした美貌だけではなく、彼のその高貴な精神性と危うさ。

 

彼は元々軍事にあまり興味がない本好きの少年でしたが、13歳の時に兄が亡くなり、そこから彼の人生は大きく変わります。13歳で突然王位継承者という重圧を背負い、兄の復讐のために、剣技などの武芸を、とてつもない修練を積んで己を鍛えます。更に叔父から性的虐待を受けながらも叔父への愛情は捨てきれず。

 

こういったことが彼を常に自身の感情を押し隠した冷静な人物へ変えていきます。

 

本当のローレントは誠実で優しい面も持つ人物だということが、デイメンの認識の変化と共に読者にも分かるようになっています。

 

そして何が彼を変えたのかも。

 

 

 

普段は澄ましていて冷酷で余裕のある態度を崩さないローレントが、いざ、デイメンとそういう感じになると、一気に初心な様子になるのが、可愛すぎて破壊力がとんでもない。

 

これはなぜかと言うと、実際に彼は経験はほとんどなくて、唯一の過去の経験は叔父に性的虐待を受けたことのみだったからですね。

 

そんで、ベッドでSっ気を見せつつも素直になったり従順な所を見せてみたりと、もう最高な訳ですよ。

 

色子という愛人みたいな感じの人とセックスに励むヴェーレの貴族たちと違って、誰ともそういったことをしようとしないローレントは王宮において周りから「不感症」等と噂されますが、そんな難攻不落の彼だからこそ、セックスをするシーンではありがたみと尊さが溢れてます。

 

ローレントがそうなったのはおそらく叔父のせいという面も大きく、それを思うと痛ましいですが。

 

受けの気が強く一筋縄ではいかないというのはアドリアンと一緒ですね。ローレントはもはや気が強いとかいう次元ではないですけれど。

 

 

 

デイメンは女が好きだが男もいける・・・というノンケ寄りのバイセクシャルっぽいですが、ローレントはヴェーレの慣習もありますが、ゲイなのかなという感じですね。あまり女性に興味はなさそうです。これは良い傾向。

 

あまりに美しい男性は、女性に興味があって欲しくない、男性と絡んで欲しいと常々思うわけですが、もしかしてこれって少数派ですか???

 

 

 

*この叛獄の王子の良さ(?)の一つはリバがないということですね。海外ものだと結構リバがあるのですが、こちらはリバはなく、またそれがありそうな雰囲気も感じさせません。

 

ええ、攻め受け固定というやつですよ。固定過激派のみなさんもご安心ください。

 

なんでか周りの登場人物からも完全にデイメン×ローレントだと思われている(実際そうなのだが)し、体格差とか見た目からそうだろうということなのか。

 

 

 5 サブキャラも良い作品は名作

デイメンとローレントの他、サブキャラたちも魅力的です。

 

キャラが比較的沢山出てくるので、しかも横文字の名前はどうも日本人は覚えにくいのか、「あれ? グイオン? グイオンって誰やったっけ」みたいな事態が頻発(わたしだけ?)します。

 

皆それぞれに人間臭さがあり、個性があり、各人各様デイメンやローレントと絡みます。

 

主役2人をお膳立てするために作り出されたサブキャラ(結構多いよね・・・)はいなくて、きちんと独立して存在してサブキャラとして命を持っていて魅力的です。

 

 

デイメンとローレントの敵となるのが、ローレントの叔父である執政です。この男がとんでもない男で、ショタコンの変態でしかもローレント以上に狡猾で謀略に長けており、冷酷な男です。

 

若きローレント13歳〜16歳くらい?を、兄を失った彼の精神状態につけ込んで性的虐待を加えて、おそらくそれを愛と誤信させた上、成長したローレントを自分の王位を脅かす者として排除しようと(殺そうと)します。

 

執政がローレントに手を出していたことは最後の方で明かされますが、これは結構早くに特にローレントの発言などから分かっちゃいますよね。

 

むしろデイメンは何でその可能性を考えるに至らなかったのか、デイメンは、決して馬鹿ではないけれど、たまにその単純さが心配になります。

 

 

 

 6 まとめ(というほどまとまっていない)

かなりのボリュームで描き出される壮大な叙事詩であり、運命に翻弄されながらもどうしようもなくお互いに惹かれてしまった2人の王子の物語。

 

めちゃくちゃ面白くて手に汗握る物語であり、時に目頭が熱くなり、心臓が痛くなり、かつとんでもなく萌え転がる物語です。

 

 

 

デイメンもローレントも戦闘シーンや敵と対峙した際の舌戦などでは本当に格好良くて、BL的なものを抜きでも本当に興奮させられて面白い作品です。

 

この重厚さ、ハードボイルドさ、本格派(?)はBANANA FISHと通じるものがあるかも。BFは性的な繋がりのあるBLは描かれていないけどね。

 

むしろ1巻〜2巻の途中あたりまではだけどBFより男性受けしそう。

 

アッシュとローレンスはちょっと似てる。金髪碧眼の美貌を持っていて冷酷だけど優しくて。

 

 

 

この壮大な物語は感想をグダグダ語るもおこがましい、とにかく読んでくれ!!!

 

元々活字があまり好きではない人は特に、1巻は結構辛いかもしれないけれど。

 

1巻あってこその2巻、そして3巻なので!!!

 

ちなみに外伝はこちらの原著の短編集の1つを翻訳したもの。

 

The Summer Palace and Other Stories: A Captive Prince Short Story Collection

The Summer Palace and Other Stories: A Captive Prince Short Story Collection

 

 

結構あまあま〜でございますよ。

 

その他の短編も気になる木な方は原著にレッツトライ。

 

 

 

アドリアンもだけど、誰か、漫画化あるいは実写化を・・・頼む・・・。一生のお願い・・・。

 

実写化するならHBOにドラマ化あるいはTV映画化してもらって、漫画化するなら座裏屋先生にお願いしたい。