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「Life is Strange2」感想 〜兄弟狼の旅とアメリカの闇〜

【注意!!!】

以下、ネタバレが含まれていますので、本作を未プレイかつこれからプレイする予定がある方はご注意ください!!!
また、複数エンディングにそれぞれ言及しますので、その辺のネタバレを見たくない方もご注意ください!!!

アドベンチャーゲーム「Life is Strange」シリーズ待望の2作目となる本作!!
どんなゲームか簡単に。

 

ライフ イズ ストレンジ 2 - PS4

ライフ イズ ストレンジ 2 - PS4

  • 発売日: 2020/03/26
  • メディア: Video Game
 

 

『Life is Strange 2』はプレイヤーの選択によって物語の内容が変化するアドベンチャーゲームです。主人公は、シアトルに住むごく普通の兄弟。ある悲劇的な事件の後、兄のショーンは、超能力に目覚めた弟ダニエルを連れ、自分たちの居場所を求めて父親の故郷であるメキシコ「プエルト・ロボス」までの逃避行を始めます。

プレイヤーは兄のショーンを操作し、世間の目を逃れてシアトル、ポートランド、カリフォルニアと旅をする中で、様々な選択をしていきますが、それらの選択が、出会う人々と弟ダニエルの人生を変えていきます。

特にまだ小さく、危険な力を持ってしまったダニエルは、兄の立ち振る舞いに大きく影響を受けるため、どう行動するかは慎重に選ぶ必要があります。ただし、今は良さそうに思える選択が、後々良い結果をもたらすとは限りません……。

*「Life is Strange2」SQUARE ENIX 公式HPより引用

元々はフランスのゲーム会社DONTNODが開発したゲームで、そちらのグローバル版をスクエニさんが販売しています。

1作目は主人公のマックスが「時間を巻き戻す」超能力を有していましたが、本作も主人公ショーンの弟ダニエルがサイコキネシス(物を動かす超能力)に目覚めます。

特徴的なのは、主人公であるショーンの言動(プレイヤーが選択する)が、弟であるダニエルの言動に強く影響を及ぼしていく、という点です。

兄として、弟をどう導くか、ということが問われるゲームですね。

超能力・兄弟ものというと『NIGHT HEAD』『創竜伝』とか日本でも名作がありますな。

前作のように超能力を生かした特徴的なゲーム性は特になく、基本的には言動を選択してストーリーを進めて行くアドベンチャーゲーム部分が主軸となっています。

本作のストーリーは基本的にアメリカの社会問題を扱っており、特に根深い人種差別の問題に切り込んだ作品になっています。また、本作は同性愛に関する言及もかなりされています。

人種差別については、我々日本人にはいまいち実感がわかないものですが、移民によって建国され、様々な人種のるつぼであるアメリカでは人種差別は非常に根深い問題となっていますね。

本作はショーンの父親がメキシコ人移民であることからショーンたちも「外国人(移民)差別」に遭うことになります。厳密には、人種差別+移民問題という非常に難しい問題があります。

アメリカ合衆国の成立前後にはまだ国境線が確定しておらず、各国植民地などの周辺諸国との紛争が絶えなかった。とりわけスペインの影響を色濃く残すメキシコとはアラモの戦いのような大きな戦争が起きることがしばしばあり、メキシコ系住民を敵国の野蛮人として扱った経緯がある。現在ではこのような歴史的経緯に加え、就労目的で不正に入国を企てる者が後を絶たず、また既に不正に入国しているメキシコ系住民が多くなっているため、周囲の人々との軋轢を生んでいる。

Wikipediaアメリカ合衆国の人種差別」より引用。

トランプ大統領が選ばれた前回の大統領選挙でも大きな争点の一つとなっていた移民政策。トランプ大統領は、強硬な移民政策を掲げたことでも知られ、その政策が保守層などを中心に一定の支持を得ていました。

アメリカが成長を続けてきた背景には、世界中から絶えず受け入れ続けてきた移民が、アメリカ経済の底辺を担ってきた側面がある。
しかし、新たな移民の増加によってアメリカの人口構成も変わり、低賃金で働く移民に仕事を奪われかねないと感じる低所得者をはじめとする人たちの間には、自分たちの地位が脅かされているという危機感がある。

https://www3.nhk.or.jp/news/special/presidential-election_2020/basic/issue-and-point/issue-and-point_03.html より引用。

トランプ大統領の選挙戦略は、こういう移民へ不満を持つ人々へ訴えかける政策でした。「メキシコとの国境に壁を作る」ことを公約に掲げていたことが有名ですね。

後半に特に結構酷めの人種差別(移民差別)をする人物が出てきますが、冒頭でも隣人の白人青年ブレットが見事なテンプレ差別野郎で色々とディアス家に絡んできます。
そもそも、本作のショーンたちの苦境は、この隣人に絡まれたことに端を発するのですよね。
更に、ショーンを監禁した、ガソリンスタンドの店主であるハンクは田舎の保守派といった人物で地元の名士的な立ち位置ながら、人種差別的しぐさを隠そうともしない粗暴な人物でした。

途中私有地に立ち入ったショーンが男から侮辱されて暴行を受けるシーンは中々の胸糞シーンでしたね。あと、このシーンでは「人種差別」と「言語」の結びつきについて考えさせられるものがありました。
このシーンはストーリー上何か意味があるというよりも、ただ唐突な暴行・侮辱という差別の現実を描いたシーンであり、このゲームのテーマ性を感じる箇所でした。

国境付近での自警団もなかなかのレイシストぶりでした。彼らは彼ら自身が正義だと信じていることをしている。移民が自国の治安を悪化させ、自分たちの子どもに危害が及ぶと本気で信じている。
自警団が父と娘の2人組というのもなかなかのおぞましさですね。レイシストの親子承継。小さい頃から父に「移民は敵だ」旨の話をされ続けたらああなってしまうのも頷けます。

国が手を下さなくても、自警団なる団体が差別的言動を丸出しにして、時には殺人・暴行などを働く(対して罰せられない・むしろ賞賛されるのもセット)なんて歴史上例を挙げだしたらいとまがありません…(つらい)。
その辺、警察だけに警戒していればいいという訳でもなかったというのはリアルですね。

他にも、新興宗教、不法の大麻栽培、同性愛差別、といった社会問題へ言及されていますが、この移民問題・人種差別が本作の根底にずっと流れています。

同性愛については、ジェイコブがゲイであったことから親に「治療」を受けさせるとしてカルトに入信させられたり、アリゾナにあるコミュニティー「AWAY」でゲイカップルが出てきたりします。

同性愛の「矯正治療」については、実際にアメリカにおいて行われていたという事実があり、その実話を基にした『ある少年の告白』という映画も名作ですのでぜひ。

本作は大国アメリカで暮らす人々の中でも、『異端』の者たちの物語なんですよね。メキシコ移民の血を引くディアス兄弟、「家庭」「母親」といった枠から逃げ出したカレン、ヒッピーのような生活を送るキャシディーやフィン(フィンはおそらく同性愛者、あるいはバイセクシャルかもしれません)、ゲイのジェイコブ、その他農園の仲間たち、砂漠地帯で文明と距離を置いて生活するAWAYの仲間たち、身一つで世界中を旅するジャーナリストのブロディ。

そして異端の者たちは世間に冷たく当たられることも多く、ディアス兄弟も何度も辛い目に遭うわけですが、そこの理不尽さや兄弟の悲しみを描写するに留まらず、ダニエルが超能力を有していることにより、「その力をどう使うか」という「差別などの理不尽に対してどう対抗すべきか」という難しいテーマ性も有しています。

簡単に言えば、暴力・暴言に対して同様に「暴力で対抗していいのか」、という問題。理不尽なものに対して、反社会的言動で(暴力などで)対抗するのか否か(しかもその力を使うのは自分ではなく、弟のダニエル)、という難しい選択をショーンであるプレイヤーは何度も迫られます。

面白いのが、「倫理的な言動」をしていればエンディングで幸せになれるかという訳でもなく、特にこれが「ハッピーエンド」「バッドエンド」ということもなく、どの結末が一番いいと明確に言い切れないこと。この辺が大変にリアルです。

反社会的言動を行わない(=弟のダニエルが反社会的にならない)場合のエンドとして、国境を越えないことを選択すると2人して自首して、ショーンは刑期を全うする、一見、最も常識的かつ「正解」とも思われるエンド(「贖罪」)。

国境を超えることを選択すると、2人は離ればなれになってしまうものの、お互い離れた場所でそれなりに幸せとも思われる生活を送るエンド(「離別」)。

他方で反社会的言動を行う(=弟のダニエルが反社会的になる)場合のエンドとして、国境を超えないことを選択すると、ショーンが死亡し、ダニエルが1人メキシコでやさぐれるという、一番バッドっぽいエンド(「一匹狼」)。

国境を越えることを選択すると、2人でメキシコに行き、アウトサイダーとなりながらも2人で仲良く暮らすある意味ハッピーエンド(「血を分けた兄弟」)。

ショーンがダニエルの道徳性と違う方向の選択をすると、2人が離ればなれになってしまう(「離別」「一匹狼」)わけですね…。

「贖罪」エンドだと、ショーンが彼自身にはあまり落ち度はないものの15年の刑期を全うすることになり、一種ダニエルの分も罪を被る形になります。それをどう捉えるかという。現在の社会の制度に合わせて生きるという選択ですよね。

むしろ「血を分けた兄弟」の方がハッピーエンドと感じる人もいるでしょう。が、しかし国境を越える時に多くの警察官を犠牲にするのは結構な抵抗がありますよね。

最後に非常に難しい選択を迫られる点では前作「Life is Strange」と同じで、自分や自分の大切にするものを犠牲にするか、それ以外の市民(社会)を犠牲にするか、というのは似てますよね。ただ、今回はディアス兄弟は社会や世間に辛い目にあわされてきたわけであり(警官に父親を殺され、道中差別主義者に暴行を受け、etc)それを鑑みても社会(社会というか警察が代表するような「権力」なのかも)に適合しようとするか、という。

アメリカで現在進行形で起こっている難しい社会問題をテーマとして、それに対面したときどのような行動をとるのか、「力」を得たときに「力」をどのように使うのか。そんな選択をプレイヤーに問いかける、非常に選択するのが辛くも示唆的で面白いゲームでした。

アメリカの移民問題などについて、理解があるとより楽しめるゲームですね。細々としたお遊び的要素(例えば視力検査のやつとか)は要らないなと感じたり、音楽と背景が延々と流れたりするシーンは「長いな・・・」とせっかちな自分は感じたりしましたが、とにかく非常にストーリーと音楽が良い作品でした。

最後に各キャラクターについて一言。

ショーン:何だかんだと優しく頼れるいいお兄さん。けど9歳の弟の前でタバコをぷかぷかしてお酒を飲むのはいいのかこれは。

ダニエル:可愛いんだけど、中々言うことを聞かなかったりしてイライラさせられるのがリアル。カルトに洗脳されて一緒に行かないと言い出したときは変な髪型も合まって「このアホガキ!!」とイライラMAX。

お父さん:マジで素敵なお父さん。

カレン:無責任感はあるが、結婚とか家庭を求められるのが辛いって人はいますよね。せめて養育費とかは送るのが筋かと。子供に過干渉・依存する親とどちらがいいのだろうね。

隣人ブレット:典型的なチンピラで、汝こんな隣人は愛さずともよい。

ブロディ:ブロディは本作の癒し。

フィン:いやまさか「一緒に強盗しようぜ!!」というのがフィンルートのトリガーだなんて思わないですよ・・・。そんな気配見せてた?? 

キャシディ:こういういかしたお姉さんが恋人枠になるのは、日本のゲームじゃあり得ないよなあ。

クリス:クリスの「The Awesome Adventure of Captain Spirit」、延々と作業するのつら・・・退屈や・・・って思ってたけど、最後に「マントロイド」が何か分かって「うあああああああ」ってなるよ。

リスベス(教祖):とんでもない偽善者で自分が一番大切。マジで嫌い。

ジェイコブ:初めは存在感を消していたが、その後意外と活躍する。